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スイスで博士号を取得したScientistの徒然なるひとり言

進学か就職か 進路に悩む後輩からの質問に答える スイス留学体験記

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こんにちは。


学生の皆さん。修士から進学するか、就職するか悩んでいますか?


悩みの種は何でしょうか?


この記事は後輩で、進学か就職か悩んでいる方からの質問を元に記しました。





4つほど質問をくれたので順に答えていきますね。

ドクター進学を決めた理由

大きく分けると5つあります。

1.日本の理系博士の数が低下している
2.日本の産業レベルが低下気味
3.今の自分が有機合成を仕事にしてもこんな豆知識程度で世間の役に立てるのか
4.好きなことを極められなかった過去
5.世界で通用する人材になりたい

詳しくはこちらを参照ください。
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この中でも主な理由は1と2です。


現在の日本の博士学生を取り巻く経済状況では博士の数が減少するのは否めません。


国力を下げたいです!と公言しているようなものです。


故に産業レベルが低下している。


もう一度国力を上げるには高いレベルを持った博士の数と研究力が必要です。


日本に生を受けたものとして、その時に自分が祖国のためにできることをしました。



日本の所属大学または他大ではなく海外を選んだ理由

これは単純に自分が思う、自分がより成長できる環境が海外にあっただけです。


日本に居ても成長はできたでしょう。ただ、幅は違ったと思います。


化学がより分かるようになるよりかは、一人の人間としての成長です。


今まで生活していた国に体の細胞1つ1つが慣れ切っています。


だから、困難に見えたり、精神的に追い詰められそうなとき、仕事が山積みになり趣味に時間が取れなかったりしてもそれ程の壁には見えません。



しかし、国が変わると全てが変わります。


生活習慣、食べ物、周りの環境、言語、人間関係など全てです。


それに加えて経験したことのないような出来事が初めの頃は毎日起きます。


移民局で滞在許可書の発行、銀行口座の開設、保険の加入、アパートの契約、携帯の契約、大学の入学登録などもあります。


生活環境のセットアップだけで最初のうちはかなり堪えます。



ラボでも覚えることはトン程あります。


実験の進め方も教授によって異なります。


環境を変えるとはそう言う事です。



これらをこなして、慣れるまでが最高に成長できる過程です。でっかくなりすぎて困るくらいですよ。


もう一つはお金です。


24歳になってまで親の脛かじりじゃ親不孝ものです。


しかし、日本の環境ではそうなる確率が少なからずある。


海外は博士課程に進学する=お給料が支払われるので入学してしまえばお金の心配はしなくて済みます。

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現に今スイスで妻と2人暮らしでも全く問題ありません。
(妻が隣にいてくれる事が最大の癒し。感謝です。)

日本の研究室と海外の研究室のレベルや雰囲気の違い


学生のレベルは同じだと思います。


ただ、欧州や米国は左脳主体の思考なので、全ての行動に理由を付けられるくらい論理的な思考をしています。つまり、常にbecauseを言える状態。


また、彼らの母国語は少なくともアルファベットが元なので、英語を操る際に簡単に文ができます。


イタ語、ドイ語、フラ語など言語名は異なりますが、少なくとも有機化学において使う単語は全く同じか、発音が変わる程度です。


その点、日本語で有機化学を一から学んだ私は反応名やら官能基名やらを英語バージョンで覚えるのに少し時間がかかりました。


また、独自の言語体系を持つ日本人には英語の表現の超シンプルさに慣れるのも時間を要します。右脳主体であるが故にうまく説明できないなど歯痒い時もあります。


研究室の設備は海外の方が良いと思います。


日本だと指折りの研究室しか置いていないような機器が普通にあります。



例えば、TLC-MSです。ケムステにも紹介されていました。
www.chem-station.com



TLCを上げて、スポットのシリカから化合物を溶解させてマスを見れる機械です。


目的物や副生成物の位置、分子量が一瞬でわかる優れものです。



オートカラム、ガスマス、キラルガスマス、液クロ、glove box、H-cubeなどもありますし、自分専用の真空ラインまであります。


以上のように設備はかなり充実していると思います。



研究室の雰囲気は日本と同じですね。



飲みに行ったり、旅行しに行ったりもします。



お昼は何人かで食べに行ったりもします。



異なるのは、一斉入学ではないので、学年ごとの連帯感はないです。


何かを計画するとき学年で担当になることが日本では多かったですが、こちらでは個人が挙手をして担当します。簡単に言うと個人主義ですね。






将来どういったビジョンを持っているか

将来のビジョンは持っていません。


どうなるかは自分にも分からないです。


そのときにやりたい方向に行くと思います。


それはつまり、有機化学をやっているから化学系会社に就職する確率は100%ではないと言うこと。


普通に就職かもしれないし、ポスドクかもしれない。


有機化学を離れて、起業してるかもしれません。


最近は農業に興味があります。(しかも無農薬


だから人生は面白いんです。   


まとめ

如何だったでしょうか?

偉そうに書いていますが私も当時は精神的にきてました。

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奨学金の採用通知時期や院の入試の時期、就職活動の時期など、全てをパズルのように完璧に保険をかけながら行くのは難しいかもしれません。


だから、私の場合は海外大に落ちたら日本の大学の博士課程1年になり、その年に就活して、次の年に就職するつもりでした。



最悪こうすると予定を立てておくと心が楽になると思います。



数年間チャランポランな生活したって誰にも迷惑かけなければいいだけで、そこから本当にやりたい事が見つかる可能性もあります。


一流と言われる大学から、やりたいことを見つけて芸人さんやサッカー選手になった友人もいます。


問題がそこにあるのではなく、問題は自分で勝手に作ってるものだと思えば更に楽になりますよ。


進学したって嫌ならやめればいいし、就職してやっぱり博士課程行きたいって思ったら行ったら良いんです。



だってあなたの人生はあなたのものだから。



軽〜くゆる〜く考えてくださいね!



いつも読んでくださりありがとうございます。
感謝です!



では。