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スイスで博士号を取得したScientistの徒然なるひとり言

全合成とは行かない反応条件を見つけるもの

現在ある天然物の全合成を行なっています。

 

試薬会社から購入できる試薬を出発原料として自然が作り出した複雑かつ巧妙にデザインされた化合物(天然物)を組み立てて行くのが全合成と言います。

 

全合成をやっていると人間は2つのパターンに分けられる事が多いです。

1:反応条件を片っ端から試す、つまり実験の数ははちゃめちゃに多く、最適な方法を見つけ出すタイプ。

2:一つ一つ少しゆっくり考えながら丁寧に反応を仕掛けていくタイプ。

 

僕は1寄りの2ですかね。

修士の時も全合成をやっていましたが、その時はバリバリの1でした。

普通に徹夜して、朝の5時まで反応しかけて、机に突っ伏してボスが来る8時まで寝てました。

ずーと反応条件を考えてました。

山本尚先生が仰るように実験をしていない時でもその事を考えるようにしておくと閃きが起きやすいのは事実ですね。

 

ただ、体にくる。長くは持ちません。

もう大学生のように朝までカラオケに行けるほど若くはないw

 

こちらにきてから丁寧に反応を仕掛けていくタイプ寄りにトランスフォームしたところ、数はあまり仕掛けられないのでたまーに焦る時がありますが、いい条件に辿り着くのが心なしか早い気がするような。

睡眠をきちんと取れているため精神的に安定しているのもあると思います。

全合成をすると不登校になったり、退学するくらい思い詰める人もいるんですね。

そこまでなら研究室変えるなり、大学変えるなりした方がいいかと。

全合成には余り執着しない方が良いですね。

だって、数ある反応条件の中から特定の基質に、人間の思った通りに行くものを探し出すのが全合成だから。

 

別の言い方をすれば、行かない反応(使えない)を見つけ出す研究とも。

 

ある教授が言っていましたが100個仕掛けて3つ宜しい結果が出ればよしっと。

 

論文のサポーティングインフォには、行かない条件も全て載せてくれると助かる人が居るのかなぁなんて思ったり。

全合成の意義はそこにもあると思います。

勿論全合成をどのように達成するか、インパクトも重要ですが、有機化学をより洗練されたものにするためにも全合成研究は一役かっているは確かですね。

 

秋の夜長に思ったことをつらつらと書いてみました。