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スイスでPhD(博士号)を取得したScientistの徒然なるひとり言

心の余裕 〜バーゼル生活〜

『こっちの学生は心に余裕がある』

 

そう感じたのは研究室に入ってすぐでした。

 

僕は学部と修士時代は日本でアルカロイド天然物の全合成をしていました。はじめは全合成という言葉すら知らず、言葉の意味から勉強したのを覚えています。簡単に言うとある活性を持つ天然成分を天然だけではなく人工的に簡単に安く作れる方法を開発するって感じです。

 

自分で合成計画を立案し、先輩や教授とディスカッションして合成を進めていきました。全合成をやっている人ならわかりますが1つの反応でも思いのほか最適条件を見つけるのが大変な時が多々あります。

特に修士の時は進学活動、奨学金申請、学会、講義など、まぁ色々マストなことが多く、未熟な自分はセカセカしていました。つまり心の余裕がなかったのです。

すると科学を心から楽しめなくなっていました。

今思えば精神的に疲れていました。

実験したくないと思う時さえありました。

こんなんで海外でやっていけるだろうかと疑心暗鬼になった時もあります。

 

ですがこっちに来て最初の飲み会で先輩たちに言われました。

 

『日本にいた時のようなハードワークをしていたら、体もたないぞ。気楽にゆっくりやれよ。重要なことでない限り土日はラボに行くな。』

 

今では土日はなるべく行かないようにし、金曜までにキリよくおわすようにしています。

すると月曜日の憂鬱感が消え、気持ちのいいおはようが言えるようになりました。

心に余裕ができました。

金曜まで頑張ればゆっくり休めると思うとエンジンがフル回転します。

 

これが効率の良さなのかとはじめて感じた気がします。

 

またこれは平日にも言えることで日本のラボのように深夜まで残るようなことはありません。

遅くても7時にはみんな帰ります。

ゆっくりご飯を食べて、ゆっくり寝ます。すると翌日をフレッシュに迎えることができます。今日も頑張るぞと思えます。

日本で毎日クタクタになりながら生活していたのが怖いです。

 

これは今の日本企業やその他の組織にも言えることだと思います。

 

クタクタになるまで働く時代はもう終わりにすべきですね。ハードワークが日本人の売りならそれは夜遅くまで働くことではなく細かなところまで突き詰めて考える能力、習慣が日本のハードワークだと僕は思います。

余裕を持った締め切りを設けて、早帰りを促し、しっかり休んでしっかり仕事する。

そういう時代にしないと人口が減る一方で益々首絞めると思います。

 

いつか日本で働くときまでにそうなっていればいいなーと思いますね。なってなかったら僕が変えます笑。

 

最近感じたことでした。

 

では。